サルコペニアを改善する食事
前回はサルコピニアの改善には、適切な栄養管理と運動が重要であることを説明しました。今回は、サルコペニアを改善する食事についてお話ししたいと思います。
糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを5大栄養素といいます。主なエネルギー源は糖質と脂質、主な生体の構成成分はたんぱく質とミネラルです。今回はサルコピニアを改善する食事として筋力を高める栄養、持久力を高める栄養について述べていきますが、筋力を高めるにも持久力を高めるにもたんぱく質と糖質が、その摂取するタイミングとともに重要です。
5大栄養素とその役割
身体をつくるたんぱく質
たんぱく質は身体をつくる筋肉、内臓、皮膚、血液など身体のの主要な構成成分です。たんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、そのうち種類は体内で合成できないため必須アミノ酸と呼ばれ、食事から補う必要があります。
力や熱になる脂質・糖質
脂質は摂りすぎると肥満につながりますが、少量でも多くのエネルギーを得ることができる効率の良いエネルギー源です。糖質は身体を動かすエネルギー源となり、肝臓と筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。糖は脳の主要なエネルギーとなります。脂質は肉類の脂身、食用油脂類、糖は穀類、イモ類、砂糖類、果物類に多く含まれます。
身体の調子を整えるビタミン・ミネラル
ビタミン・ミネラルはエネルギー源にはなりませんが、たんぱく質、脂質、糖質の分解や合成を助ける働きを持ち、健康維持、体調管理には欠かせない栄養素です。ビタミンは野菜、果物に多く含まれます。ミネラルは無機質ともいい、ヒトの身体を構成する元素から酸素・炭素・水素・窒素を除いたものの総称です。ヒトの身体に必要なミネラルはカルシウム、鉄、ナトリウムなど16種類あり、野菜、果物、海藻、乳・乳製品に多く含まれます。
筋力を高める栄養
筋力を高めるには、筋肉のたんぱく質を増やすことが重要です。レジスタンストレーニングの効果を高めるには、特にたんぱく質、アミノ酸、糖質の摂取が有効です。
アミノ酸と糖質を摂取するタイミングは運動直前が最も有効です。また、運動中や運動後にアミノ酸と糖質を摂取するとたんぱく質の合成が増加します。運動後の摂取は、レジスタンストレーニング直後であるほど効果が高いです。
運動後なるべく早くたんぱく質と糖質を含んだ食事をすることで、筋肉のたんぱく質の合成量が増加します。たんぱく質の摂取量は、通常高齢者で1.0~1.2g/kg体重/日、運動をしている高齢者では1.2g/kg体重/日以上、急性疾患や慢性疾患で低栄養の高齢者では1.2~1.5g/kg体重/日以上が推奨されています。ただし、慢性腎臓病ではたんぱく質の摂取制限を要する場合があるので注意が必要です。食事後に1~2時間睡眠をすることで、成長ホルモンの分泌が亢進するためたんぱく質の合成量が増えます。
持久力を高める栄養
持久力を高めるには、肝臓と筋肉にグリコーゲンを十分に貯蔵することと貧血の予防が重要です。
グリコーゲンの貯蔵には糖質の十分な摂取が必要です。柑橘類などに多いクエン酸は、グリコーゲンの合成を促進します。運動前に高糖質食を摂取すると肝臓と筋肉のグリコーゲンの貯蔵量が増加しますので、運動の3~4時間前に糖質とたんぱく質を含んだ食事を摂取することが推奨されています。
1時間を超える運動では、運動中に体内のグリコーゲンが減少するため運動中に糖質を摂取するほうが良いです。運動直後に糖質を摂取すると、肝臓と筋肉のグリコーゲンの貯蔵量が増加します。その効果は運動直後であるほど高くなります。糖質とたんぱく質が約3:1となるようにたんぱく質を追加することで、グリコーゲンの貯蔵量はさらに増えます。
貧血の予防には、ヘモグロビンを構成する鉄とたんぱく質の十分な摂取が重要となります。ビタミンB12、葉酸、銅の欠乏にも留意が必要です。貧血の場合運動で機能改善しにくいため、適切な原因の追究と治療が重要です。
以上サルコペニアを改善する食事について説明しました。次回は、サルコペニアを改善するための運動についてお話ししたいと思います。