住宅改修―介護保険でできること
介護保険では、要介護者が自宅に手すり等を取り付けるなど住宅改修を行うときに、必要な書類を添えて申請することで収入などに応じて住宅改修費の7~9割が支給されます。今回は、この住宅改修費の支給について、何ができるか、限度額、その他の注意点などをまとめていきます。
福祉用具については前回の投稿をご参照ください。
誰が使えるの
住宅改修費の支給は、在宅の要介護、要支援認定を受けている人が対象です。ですから、要介護度を問わず、要支援1~2、要介護1~5の認定を受けていれば利用できます。ただし、改修できるのは介護保険症に記載されている「自宅」に住んでいる場合に限られますので、施設に入居されている場合には利用することができません。
支給額は、要介護度にかかわらず、20万円が限度で、利用者は収入に応じてその1~3割を自己負担することになります。支給は、原則ひとり生涯一度きりです。ただし、一度にすべてを使い切る必要はなく、20万円の上限内であれば複数回に分けて利用することもできます。また、例外として要介護区分が3段階以上重くなったときや、転居したときには再度20万円までの支給限度額が設定されます。
何ができるの
住宅改修ができるのは以下の通りとなります。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑り止めや移動を円滑にするため等の床または通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- 上記1~5の各工事に付帯して必要と認められる工事
手すりの取り付け
廊下や階段、トイレ、浴室、玄関などの手すりの取り付けが可能です。玄関から道路までの工事も住宅改修の支給の対象となります。
段差の解消
玄関と廊下、脱衣所と浴室など、段差がある部分にスロープを設置する工事になります。車いすの場合は、介助する場合で1/6(段差の6倍の長さのスロープ)、自走する場合で1/12(段差の12倍の長さのスロープ)が必要になります。
扉の取替え
開き戸を引き戸やアコーディオンカーテンへと取り換える工事になります。開き戸の開閉時にバランスを崩して転倒するケースは多く、転倒予防に有効です。また、引き戸に変更することで開口部が大きくなり、車いすでの移動が容易になります。
床や通路の材質変更
浴室や廊下、階段の床を滑りにくい材質に変更する工事になります。玄関から道路までの屋外での工事も可能です。
便器の取替え
和式便器から洋式便器への取替えが対象となります。その改修の際に温かい便座や洗浄機能付き便座への変更も可能です。また、便座の位置、向きの変更も対象となります。ただし、洋式便器を新しいものにする場合や、温かい便座や洗浄機能付き便座のみの設置は対象外です。
住宅改修の流れ
まず、住宅改修についてケアマネージャー等に相談してください。次に市区町村に書類を提出します。提出書類は以下になります。
- 支給申請書
- 住宅改修が必要な理由書
- 工事費見積もり書
- 住宅改修後の完成予定の状態が分かるもの(写真または簡単な図)
上記の書類の作成にあたっては、ご本人やご家族、ケアマネージャー、事業者、理学療法士等が打ち合わせ、身体の状態にあった改修の住宅改修プランを立てることになります。
提出書類を市区町村に提出して審査に通ると着工することになります。工事終了後にも以下の書類の提出が必要です。
- 住宅改修に要した費用に係る領収書
- 工事費内訳書
- 住宅改修の完成後の状態を確認できる書類
- 住宅の所有者の承諾書(住宅改修を行った住宅の所有者が当該利用者でない場合)
住宅改修費の支給には、償還払いと受領委任払いという2つの方法があります。
償還払いは、一旦工事費用を全額事業者に支払い、工事後に領収書等の書類を提出するこで給付の対象となる費用の支給を受ける方法です。
受領委任払いとは、利用者は介護保険の自己負担額だけを支払い、残りは自治体から事業者に直接支払われる方法です。工事費を建て替える必要がないため、一時的な負担が解消されます。