高血圧の薬、ずっと飲むの?副作用は?ー不安を安心に変えるやさしいお話

 こんにちは!訪問看護ステーションアプスルです。

 いつも私たちのブログをご覧いただき、ありがとうございます。 今回は、高齢の方やそのご家族にとってとても身近な病気「高血圧」と、その治療に使われる「お薬」について、よくある疑問や不安に寄り添いながら、わかりやすくお話ししていきたいと思います。

「お薬って、ずっと飲み続けないといけないの?」「副作用が心配…」 そんなふうに感じたこと、ありませんか?

 このブログが、少しでも安心や納得につながるヒントになれば嬉しいです。

血圧って、そもそも何?

 血圧とは、心臓がポンプのように血液を送り出すときに血管にかかる圧力のことです。

  • 収縮期血圧(上の血圧):心臓がギュッと収縮して血液を送り出すときの圧力
  • 拡張期血圧(下の血圧):心臓がゆるんで血液を受け取るときの圧力

 血液がスムーズに体をめぐるために、血圧はとても重要な役割を担っています。

高血圧とは?家庭と病院での基準値に違いがあります

 2024年時点のガイドラインによると、病院での血圧が

  • 上(収縮期)140mmHg以上
  • 下(拡張期)90mmHg以上

であれば「高血圧」と診断されます。

 家庭でリラックスした状態で測る場合は、

  • 上が135mmHg以上
  • 下が85mmHg以上

が目安となります。

 昔は「年齢+90」という目安もありましたが、今では年齢に関係なく一定の基準で判断するようになっています。ただし、高齢の方の場合は体の状態に応じて無理のない目標値を決めることが多いため、「自分に合った血圧」はかかりつけ医と相談しながら決めていきましょう。

高血圧を放っておくとどうなるの?

「症状もないし、少し高いくらいなら平気じゃない?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 でも高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれるほど、自覚症状が少なく、知らないうちに体に負担をかけ続けてしまう怖い病気です。

 高血圧の状態が長く続くと、血管の壁に常に高い圧力がかかるため、血管が硬くなったり厚くなったりする「動脈硬化」が進行しやすくなります。動脈硬化が進むと、以下のような重い病気のリスクが高まってしまうのです。

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
  • 心不全・心筋梗塞
  • 腎臓の機能低下(透析が必要になることも)
  • 大動脈瘤・大動脈解離

など、命に関わる病気の原因になることがあります。 だからこそ、日々の血圧管理とお薬の服用が大切なのです。

お薬は一生飲み続けなきゃいけないの?

「お薬を始めたら、もう一生やめられないの?」 そんな不安を抱える方は多いです。

 でも、どうぞご安心ください。

 お薬は「体を守るためのサポート役」です。生活習慣(食事・運動・体重・睡眠など)を整えることで、医師の判断のもと、量を減らしたり中止できる可能性も十分にあります。具体的には、生活習慣の改善には、塩分を控えた食事、バランスのとれた栄養、十分な睡眠、ストレスの軽減なども大切です。

 ただし、自己判断でやめるのはとても危険です。

 お薬を急にやめてしまうと、

  • 血圧が急に上がり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる
  • 数日で以前より高い血圧に戻ることがある(リバウンド現象)

といった深刻な影響が出ることがあります。必ず、かかりつけ医に相談してから変更しましょう。

 生活習慣が改善されることで、薬を減らしたり中止できる可能性もありますが、すべての方に当てはまるわけではありません。繰り返しになりますが必ず、かかりつけ医に相談してから変更しましょう。

治せる高血圧「二次性高血圧」もあります

 高血圧の約90%以上は「本態性高血圧(原因が特定できないタイプ)」ですが、5~10%程度は治療可能な原因のある「二次性高血圧」というものもあります。

 代表的な原因には、

  • 原発性アルドステロン症(副腎ホルモンの異常)
  • 腎臓の病気
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 甲状腺の異常

などがあります。

「薬が効きにくい」「カリウムが低い」といった特徴がある方は、こうした病気が隠れているかもしれません。気になる方は、かかりつけ医に相談してみてくださいね。

高血圧のお薬にはどんな種類があるの?

薬の種類主な働き副作用の例
カルシウム拮抗薬血管を広げて血圧を下げる顔のほてり、足のむくみ
ACE阻害薬血圧を上げるホルモンの働きを抑える空咳、まれにアレルギー反応
ARBACE阻害薬と似た作用、腎臓保護比較的副作用は少ない
利尿薬体の余分な水分を排出する脱水、カリウム低下、頻尿
β遮断薬心臓の働きを抑えて血圧を下げる脈が遅くなる、だるさ
α遮断薬血管を広げて血圧を下げる立ちくらみ、ふらつき

 お薬には、効果と同時に副作用の可能性もあります。
 そのため、「副作用が怖い」と感じるのはとても自然なことです。

 ただ、医師はお薬の「メリット(効果)」が「リスク(副作用)」を上回ると判断した場合にのみ処方を行います。
 また、副作用が出る可能性があっても、それが命に関わるような重大なものであることはまれで、多くの場合は「用量調整」や「別の薬への切り替え」で対処できます。

 お薬を飲む上で、疑問や不安を感じるのは当然のことです。

  • 「このお薬、私に合っているのかな?」
  • 「副作用が心配…」
  • 「飲み忘れてしまったらどうしよう?」

など、どんな小さなことでも構いません。

 必ず、かかりつけ医や薬剤師さんに相談してください。 専門家は、皆さんの状態を理解し、適切なアドバイスをくれるはずです。納得して治療に取り組むことが、何よりも大切です。

年を重ねて血圧が下がってきたときは?

 高齢になると、活動量や食事の変化、病気の影響などで血圧が自然に下がることもあります。

 このような場合でも、自己判断で薬をやめるのはとても危険です。

 血圧が下がりすぎると、

  • めまい・ふらつき
  • 転倒や骨折
  • 意識の消失

といったリスクが高まります。

 かかりつけ医は、定期的な診察や血圧測定の結果、さらには患者さんの体調や生活状況、認知症の進行度などを総合的に判断して、お薬の量や種類を調整してくれます。高齢者の方の場合、無理に血圧を下げすぎないように、目標血圧を少し緩やかに設定することもあります。

「最近、血圧が低い気がする」「体調が優れない」といった変化があれば、必ず受診時にかかりつけ医に伝えましょう。

運動と血圧の関係、リハビリの効果も大切に

 血圧を整えるには、適度な運動もとても大切です。

 特におすすめなのは、

  • 有酸素運動(ウォーキング、ラジオ体操、軽いサイクリングなど)
  • レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)(椅子立ち上がり運動やゴムチューブを使った運動など)

 この2つをバランスよく取り入れることで、

  • 血圧の安定
  • 血管の柔軟性向上
  • 体力・筋力の維持
  • 転倒予防

など、さまざまな効果が期待できます。

 訪問看護ステーションでは、理学療法士や作業療法士が一人ひとりの状態に合わせて安全で効果的な運動を提案しています。

「どんな運動が合っているのかわからない」「一人では不安…」という方も、ぜひお気軽にご相談くださいね。

訪問看護でできるサポート

 私たち訪問看護師は、

  • 正確な血圧測定と記録
  • お薬の管理や飲み忘れ対策(お薬カレンダーの準備やセットなど)
  • 副作用の早期発見と主治医との連携
  • 食事や運動など生活習慣のアドバイス
  • 気になることを安心して話せる場所づくり

を通じて、ご自宅での治療をしっかりサポートしています。

「一人でがんばらなくても大丈夫。」 あなたとご家族に寄り添いながら、一緒に歩んでいきます。

最後に:血圧の治療は、未来を守るために

 血圧の治療は、今の体を守り、これからの暮らしを安心して続けていくための大切な一歩です。

「副作用が怖い」「薬をずっと飲み続けるのは不安」 そんな気持ちにも、私たちはしっかり耳を傾けたいと思っています。

 どうか、一人で抱え込まず、どんな小さなことでもお話しくださいね。


【免責事項】 この記事は一般的な情報の提供を目的としています。具体的な症状や治療については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。