介護保険で使えるサービス

 前回に引き続き介護保険で使える介護サービスについてお話したいと思います。介護サービスには自宅で受けることができるサービス、自宅での生活は続けながら一時的に施設に入居することができるサービス、施設に入居して施設内で生活しながら受けることができるサービスなど様々なものがありますのでそれらを解説していきます。

要介護度によって1か月に使える単位数が変わる

 介護サービスについての説明に入る前に「要支援1~要介護5」までの7段階がある要介護度について説明します。介護保険ではそれぞれの要介護度に応じて1か月間に使える単位数の限度(区分支給限度基準額)が決まっており以下のようになっています(令和6年現在)。

区分支給限度基準額

区分支給限度基準額
要支援15,032
要支援210,531
要介護116,765
要介護219,705
要介護327,048
要介護430,938
要介護536,217

 上記に記載したように、要介護度によって1か月に使える単位数の限度が変わります。では、そもそも要介護度とはどのように判定されるのでしょうか。それは、その方の介護に要する時間と認知症加算によって判定されます。よく認定調査の際に自身のご病気の重篤さについて詳しく話され、「あれはできますか、これはできますか」という質問には何でも(実際には家族に手伝ってもらっている場合にも)「できます、できます」と答えてしまわれる方がいらっしゃいますが、それでは実際の生活状況よりも軽い要介護度となってしまうことがあるので気を付けてください。もちろん調査員もそのあたりはよく分かっていて、ご家族に生活状況の聴き取りはしますが。

 ここまで要介護度によって変わる単位数について述べてきましたが、最後に1単位の金額についてお話したいと思います。1単位の金額は事業所の所在する地域と利用する介護サービスごとに設定されており10円~11.4円になります。これは、基本的に人件費の高い都市部ほど高く設定されているのですが、逆に山間部での加算もあったりして一概には言えません。そして、そのうちサービスの利用者が支払うのは基本的には1割(収入によっては2~3割)です。介護サービスの利用開始にあたっては、必ずケアマネージャーが1か月の費用を示してくれることになっています。

介護サービスにどんなものがある?

 まず、介護サービスは大きく2つに分けることができます。1つめは居宅サービスです。これは文字通り自宅での生活を続けながら受けることができる介護サービスです。もう1つは、施設サービスです。こちらは介護老人保健施設(老健)や介護老人福祉施設(特養)などの介護老人施設の入居した上で受けることができる介護サービスです。この2つのサービスを併用することはできません。例えば、特養に入居中の方が一時帰宅し、自宅で訪問介護を受けるといったことはできませんので注意が必要です。

 それでは、居宅サービスから解説していきます。居宅サービスには、自宅に介護士や看護師などが訪問する訪問、自宅から通って日中の数時間を施設で過ごす通所、一時的に泊まりで利用する短期入所などがあります。

訪問サービス

訪問介護

 訪問介護では、介護福祉士やヘルパーなどが自宅に訪問し介護サービスを行います。訪問介護には、食事介助や入浴介助・排泄介助など直接身体に触れる介助を行う身体介助と料理や洗濯・買い物などを行う生活援助があります。

身体介護20分未満163単位
20分以上30分未満244単位
30分以上1時間未満387単位
1時間以上567単位(30分増すごとに+82単位)
生活援助20分以上45分未満179単位
45分以上220単位
通院等乗降介助1回につき97単位

訪問看護

 訪問介護では、介護福祉士やヘルパーなどが自宅に訪問し介護サービスを行います。訪問介護には、食事介助や入浴介助・排泄介助など直接身体に触れる介助を行う身体介助と料理や洗濯・買い物などを行う生活援助があります。 

身体介護20分未満163単位
20分以上30分未満244単位
30分以上1時間未満387単位
1時間以上567単位(30分増すごとに+82単位)
生活援助20分以上45分未満179単位
45分以上220単位
通院等乗降介助1回につき97単位

訪問入浴介護

 訪問入浴介助とは、看護師1名と介護職員2名が浴槽を積んだ入浴車で自宅を訪問し、入浴の介助を行います。

訪問入浴介護1回につき1,266単位

訪問看護

 訪問看護では主治医の指示に基づきサービスを提供します。看護師などが訪問し療養上の世話や診療補助を行います。あるいは、看護のかわりに理学療法士・作業療法士・作業療法士が訪問しリハビリテーションを行います。

20分未満314単位
30分未満471単位
30分以上1時間未満823単位
1時間以上1時間30分未満1128単位
理学療法士等による訪問の場合294単位(1日あたり最大60分、週あたり最大12分まで)

訪問リハビリテーション

 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が自宅に訪問しリハビリテーションを行います。上述の訪問看護からの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問との違いについてはいずれ説明したいと思います。

訪問リハビリテーション病院または診療所1回につき308単位
介護老人保健施設
介護医療院

通所サービス

通所介護(デイサービス)

 施設などに通い、食事や入浴などの日常生活上の支援を受けたり、機能訓練をしたり、レクリエーションを行ったりします。

要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
通常型通所介護費3時間以上4時間未満370単位423単位479単位533単位588単位
4時間以上5時間未満388単位444単位502単位560単位617単位
5時間以上6時間未満570単位673単位777単位880単位984単位
6時間以上7時間未満584単位689単位796単位901単位1,008単位
7時間以上8時間未満658単位777単位900単位1,023単位1,148単位
8時間以上9時間未満669単位791単位915単位1,041単位1,168単位

通所リハビリテーション(デイケア)

 医療機関や介護老人保健施設に通い、食事や入浴などの日常生活上の支援を受けたり、リハビリテーションを行ったりします。

要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
通常規模の事業所
(病院または診療所)
(介護老人保健施設)
(介護医療院)
1時間以上2時間未満369単位398単位429単位458単位491単位
2時間以上3時間未満383単位439単位498単位555単位612単位
3時間以上4時間未満486単位565単位643単位743単位842単位
4時間以上5時間未満553単位642単位730単位844単位957単位
5時間以上6時間未満622単位738単位852単位987単位1,120単位
6時間以上7時間未満715単位850単位981単位1,137単位1,290単位
7時間以上8時間未満762単位903単位1,046単位1,215単位1,379単位

短期入所サービス

 介護老人福祉施設・介護老人保健施設・病院・診療所に、家族の介護負担の軽減などを目的に短期間入所するサービスです。費用は、従来型かユニット型かや要介護度によって異なり煩雑となりますのでここでは割愛します。

その他のサービス

福祉用具貸与・購入費の支給

 日常生活の自立を助けるための福祉用具の福祉用具を貸与したり、購入費の7~9割を支給したりします。貸与となる福祉用具と購入となる福祉用具にはルールがあります。また、ベッドなどは一定の要介護度以上でなければ貸与されないものなどがあります。それらについてはまたの機会にお話します。

住宅改修費の支給

 20万円を上限として、手すりの取り付けや段差の解消など住宅改修費の7~9割を支給します。住宅改修にあたっては保険者へ理由書、工事費の内訳などをつけて申請する必要があります。

介護予防サービス

 介護予防サービスとは、要支援1・2と認定された方が利用できるサービスです。介護サービスと同様訪問サービス、通所サービス、短期入所、福祉用具の貸与などのサービスがありますが、要介護と認定された場合の比べ支給限度基準額が少ないため注意が必要です。自己負担額は収入に応じて1~3割を負担することになります。

介護保険で利用できる施設サービス

 最後に介護保険で利用できる施設サービスについて説明したいと思います。介護保険で利用できる介護保険施設には以下の3種類があります。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院

 これを見て「おやっ」と思われる方も多いと思います。よく広告などで見る有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は施設サービスじゃないの?と思われることでしょう。それらは高齢者向けの分譲住宅または賃貸住宅と考えていいと思います。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、自宅で生活する場合と同様に在宅サービスを利用することで日常生活の援助や訪問看護、訪問リハビリなどを受けることができます。ただし、介護付き高齢者向け住宅や一部のサービス付き高齢者向け住宅は、運営基準や人員基準、設備基準を満たすことで「特定施設入居者生活介護」の指定を受け要介護に応じた定額の自己負担額で日常生活の援助を受けることができます。

 それぞれの施設の特徴を簡単にまとめましたので参考にしてください。

 介護医療院は2023年に廃止する介護療養型医療施設の転換先として、2018年に創設された施設です。比較的医療ニーズの高い要介護者の長期療養と生活支援を目的とした施設で、看取りも行っており、特養など比べ費用は高いですが手厚い医療ケアを受けることができるのが特徴です。