有酸素運動と体重減少の関係

 体重を減らすには有酸素運動が有効です。今さらそんなこと言わなくても、そんなこと誰でも分かってるよと言われると思われることでしょう。実際、これまでのガイドラインでも臨床的に重要な減量を達成するには、中程度の強度で少なくとも週150分以上の運動が必要であると推奨されています。

 ところが、実際にどのくらいの時間でどの程度の強度の有酸素運動を行えば体重、ウェスト周径、体脂肪が減少するのかというメタアナリシス(過去に行われた複数の研究結果を統合解析する研究)は不足しているそうで、今回この研究(注)の内容をご紹介したいと思います。

(注)Jayedi A, Soltani S, Emadi A, Zargar M, Najafi A. Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis. JAMA Netw Open. 2024;7(12):e2452185. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.52185

 この研究では、過体重または肥満の参加者6880名(女性61%、平均年齢46歳)を対象とした116件の臨床試験を対象してメタアナリシスを行いました。最低8週間の監督下での有酸素運動トレーニングを実施した研究を選択しています。

 その結果は、週30分の有酸素運動でも体重が-0.52kg、ウェスト周径-0.56cm、体脂肪-0.37%というものでした。そして、運動時間を増やすほど体重、ウェスト周径、体脂肪は直線的に減少するというものでした。具体的には、週150分の有酸素運動で、体重が-2.79kg、週300分の有酸素運動で体重-4.19kg、ウェスト周径は、中~高強度の運動で-4.21cm、高強度の運動で-5.34cmという結果です。そして、臨床的に重要な減少を達成するには、中等度の強度以上の有酸素運動を週150分以上行う必要があるということが示されました。

 では、中等度から高強度とはどの程度の運動なのでしょうか。対象とされた研究では、運動の強度を次のように分類しています。

  1. 軽度(1.6~3.0Mets、または最大心拍数の20~55%、最大酸素摂取量の20~40%)
  2. 中等度(3.0~6.0Mets、または最大心拍数の55~70%、最大酸素摂取量の40~60%)
  3. 高強度(6.0~9.0Mets、または最大心拍数の70~90%、最大酸素摂取量の60~85%)

 ということで繰り返しになりますが、有酸素運動は持続時間の長さによって直線的に体重、ウェスト周径、体脂肪が減少します。そして、臨床的に意味のある体重減少には、中等度から高強度で週150分以上の有酸素運動が必要となります。

 最後に運動強度をみるには、心拍数を指標にするのがもっとも手軽だと思います。最近は、スマートウォッチなどで簡単に心拍数を測ることができますのでそういった機器を活用すると便利でしょう。もし、そのような機器が手元にない場合の心拍数の測り方を以下に説明します。

 血管を触知するのは橈骨動脈が簡単です。まず、すべての指を軽く曲げて状態で手首を曲げてみてください。手首の内側に2本の腱が現れます。この長掌筋腱と橈骨手根屈筋腱の撓側(母指側)で橈骨動脈に触れることができます。反対の手の示指、中指、環指の3本の指をそろえ触れてみてください。橈骨動脈の拍動を感じることができるでしょう。まず、安静時心拍数を知るために1分以上安静にしたのち、1分間の心拍数を数えてみてください。また、運動中に心拍数を測るときは、10秒の拍数を数えて6倍するようにしてください。運動を中断すると心拍数はすぐに戻っていきますから、すばやく測ることでより正確な運動強度を知ることができます。

 そして、運動強度の目安となる心拍数を算出するためには「カルボーネン法」を使います。まず、「220-年齢」で最大心拍数を求めます。そこから安静時心拍数を引きます。次に運動強度をかけます。例えば目標とする心拍数が最大心拍数の55%なら、0.55をかけるといった具合です。最後に安静時心拍数を足すと目標心拍数が求められます。

{最大心拍数(220-年齢)-安静時心拍数}×運動強度+安静時心拍数

 例として40歳の人で安静時心拍数が70回/分、55%の運動強度で運動をしようとするなら、{(220-40)-70}×0.55+70=130となります。このように計算によって目標心拍数が算出されますので、それを目安に運動をすることができます。しかし、実際にやってみると分かりますがこの55%というのはかなりきつく感じると思います。はじめは40%くらいから始めて徐々に強度を上げていくことをお勧めします。