🍁秋に気をつけたい「メンタルの不調」―――公認心理師と考える、こころのセルフケア―――

 朝晩が冷え込み始め、日暮れも早くなりました。季節が移ろうこの時期、なんとなく気分が沈んだり、やる気が出にくいと感じることはありませんか?今回は、秋に起こりやすいメンタルの不調について、当ステーション所属で公認心理師でもある藤原OTに話を聞きました。

🗣公認心理師に聞く「秋のメンタルケア」

Q1.なぜ秋にメンタル不調になりやすいのでしょうか?

秋は気温や日照時間の変化が大きく、自律神経やホルモンバランスが乱れやすい季節です。日照時間が短くなることで「セロトニン(幸せホルモン)」の分泌が減り、気分が落ち込みやすくなります。また、夏の疲れが残ったまま季節が変わることで、心身のリズムが整いにくくなるのです。

また、気温の急激な変動が曲者で、特に今年は朝晩や日ごとの寒暖差が非常に大きかったため、実は私もしんどくなりました(笑)。

Q2.どんな症状が出やすいですか?

「眠れない」「なんとなくだるい」「何もしたくない」「気分が沈む」といった軽いうつ状態がよく見られます。また、人によっては食欲の低下や過食、肩こり、頭痛など、体の不調として表れることもあります。

Q3.どうすれば予防できますか?

ポイントは『生活リズムを保つこと』です。しんどくなってくるとゆっくり過ごしたほうが良い、と考えがちですが、実はある程度活動的であったほうがメンタルも保ちやすく、気候変動への順応も早くなることが分かっています。体を冷やさないことも大切です。ぬるめのお湯にゆっくりつかる、温かい飲み物でリラックスする時間を作るのも効果的です。涼しくなってきたのを逆に利用して軽く汗ばむ程度の散歩をする、などもよいでしょう。

Q4.メンタル不調を感じたとき、どう対応すればいいですか?

まずは『無理をしない』ことを自分に許してあげてください。好きな音楽を聴く、誰かと話すだけでも十分です。可能な状況であれば休みを取るのもよいでしょう。

また、こういった季節の変化がメンタルに影響することは、ある意味仕方がないとも言えます。ネガティブな感情が湧いてきても自分を責めないことが大切です。季節のせいにして、一過性のものだと割り切りましょう。人はメンタルが低下すると、どうしても原因をストレスや自分の心に求めがちですが、思っている以上に気候や食事などの影響を強く受けています。メンタル低下の原因は必ずしもストレスや心の問題だけではないことを知りましょう。

季節性の原因であれば、数日間から1週間程度様子を見ていれば落ち着いてくることが多いです。

ただし、2週間以上症状が続く場合は、医療機関や訪問看護・カウンセリングなどの専門職への相談を検討してください。

Q5.最後に、公認心理師から秋を穏やかに過ごすためのアドバイスをお願いします。

かつて、秋は自然がゆっくりと色を変える季節でした。本来、私たちの心もそんなふうに『静かに整える時間』を必要としています。しかしながら、昨今は気候変化が急激になり、ついていくのが大変です。とくに在宅療養は気候の影響をまともに受けるため大変ですよね。

訪問スタッフもご家族の介護をされている方も、急な利用者さん、ご家族の様子の変化に驚かれることもあるかもしれません。また、その支援者自身も思いのほか影響を受けているものです。焦らず、自分のペースで過ごし、『今日もこれができた』という小さな達成感を大切にし、自分にも周囲の人にも優しい視線を向けるよう意識してみてください。

🍵まとめ

秋は、体だけでなく心もデリケートになりやすい季節です。生活リズムを整え、無理のない範囲で体を動かし、時には誰かに話を聞いてもらう。そんな“心のセルフケア”を大切にして、穏やかな秋を過ごしましょう。

【藤原 望】

作業療法士 公認心理師

作業療法士歴21年。

子ども、老年期身体障害など幅広く対応。公認心理師として、精神疾患の方の心に寄り添うリハビリを提供。

モットーは「心が動けば、からだも動く」