無理せず続けられるウォーキング

 ウォーキングは、特別な道具も必要なく誰でも手軽に始められる上に、運動強度や頻度、時間を考慮して効果的に実施すれば健康増進や生活習慣病の予防、認知症の予防が期待できる非常に優れた運動です。今回はこのウォーキングを効果的に実施する方法について解説します。

ウォーキングの効果

 運動には有酸素運動と無酸素運動があり、ウォーキングは有酸素運動に含まれます。この有酸素運動と無酸素運動の違いは身体を動かすエネルギーを産生するのに酸素を使うか、使わないかによって分類されます。無酸素運動の中心は解糖系と呼ばれ、血中の糖を使って無酸素的にエネルギーを産生します。一方、有酸素運動はこの解糖系で生じた代謝産物や脂肪を使って有酸素的にエネルギーを産生します。

 身体を動かすエネルギーを産生する際運動時間開始からの時間が短いとき、運動強度が強いときには無酸素運動によるエネルギー産生の比率が高く、運動開始からの時間が長いとき、運動強度が低いときには有酸素運動によるエネルギー産生の比率が高くなります。

 ウォーキングは運動強度の調整が容易で長時間運動を続けることができるため、脂肪燃焼効果が非常に高い運動と言えます。

 有酸素運動は継続時間が長くなるほど脂肪をエネルギーとして利用する比率が高まるため、糖・脂質の代謝、血流や血管壁の伸縮性の改善、肥満の予防や改善、血糖値や脂質、血圧の状態の改善に効果があります。さらに、運動することによる心肺機能の改善の効果も見込まれます。 

 また、歩くことで荷重がかかり骨に刺激が加わるので、骨粗しょう症の予防にも効果的と言われています。

運動強度はどれくらいが効果的なの?

 メッツ(代謝当量)とは運動強度の単位で、安静座位を1として何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したものです。 

メッツ生活活動運動
2
ゆっくりした歩行(53m/分未満)
料理、洗濯
ガーデニング
ストレッチング
座って行うラジオ体操
3普通の歩行(67m/分)
掃除機
庭の草むしり
自体重を使った軽い筋トレ
4自転車(16km/時未満)
やや速歩(93m/分)
ラジオ体操第1

 厚労省による『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』によれば、高齢者には強度が3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上行うことを推奨しています。具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上行うことを推奨しています(1日約6000歩に相当)。強度が3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上を行う高齢者は、身体活動をほとんど行わない高齢者と比べて総死亡および心血管疾患死亡リスクが約30%程度低下するとの研究結果があります。

どのくらいの歩数を歩くのがいいの?

 最近の研究によると、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を予防するには、「1日8000歩、そのうち中強度の歩行が20分」が適切な身体活動量とされています。中強度の歩行とは、息が弾み汗をかく程度の速歩きで何とか会話ができる程度の歩行です。健康によい運動は、やみくもに歩数を多くすることではなく、中強度で行う身体活動の割合が日常生活で多いことが重要です。

ウォーキングを行う上で気を付けることは?

 これまで運動習慣のない人がいきなりたくさんの歩数や運動強度を目指すことは、膝などを傷めたりするなど健康を損なう恐れがあります。まずは今よりも身体を動かす時間を増やすことが大切です。

 安全で効果的なウォーキングを行うため以下の点に気を付けて行ってみてください。

  • 歩行時には中強度の歩行を意識すること。
  • 毎日の習慣として無理なく続けること。
  • 体調や天候が優れないときには無理せず休むこと。
  • 歩数などは1週間の平均を目標とすること。
  • 疲労が残る場合には目標を下げ、月単位で徐々に目標を上げていくなどの調整をすること。

 最近はスマートウォッチなどで簡単に運動を記録したり、アプリで運動の記録を共有して交流したりすることができます。そのようなツールを上手に使って運動を継続していくこともお薦めです。