無理せず、続けよう!筋力トレーニング

 前回に引き続き、今回はおすすめの筋力トレーニングを紹介したいと思います。筋力を向上させるには、ある程度以上の負荷をかけて運動する必要があります。しかし、高齢者の場合は負荷をかけて運動することは、ケガや関節の痛みにつながることがあります。そこで今回は無理せずに継続できる筋力トレーニングの方法とおすすめのトレーニングを紹介します。

筋力増強の3原則

 筋力を向上させる、骨格筋量を増やすには3つの原則があります。

  1. 過負荷の原則
  2. 漸増性の原則
  3. 継続性の原則

1.過負荷の原則

 簡単に言うと、筋力を向上させるには日常生活で使う以上の負荷を筋肉にかけなければならないということです。筋力トレーニングの効果を上げるには、負荷量、収縮時間(反復回数)、頻度の3大条件が必要です。そして、負荷量としては最大筋力の30~50%の負荷が必要と言われています。調整が難しいですが、いわゆる筋疲労をおこして運動が継続できなくなるような運動が必要です。

2.漸増性の原則

 筋力を向上させるには、同じ負荷でずっとやり続けるのではなく、徐々に負荷を上げていく必要があります。急激に負荷を上げていくとケガのリスクが高くなるので、徐々に上げていくようにしましょう。

3.継続性の原則

 筋力トレーニングの効果が出るまでには、ある程度の期間トレーニングを継続する必要があります。筋力トレーニングを始めると1~2週間ほどで筋力の向上が感じられるようになります。しかし、これはそれまで運動に参加していなかった筋肉の一部が運動に参加するようになるだけで、筋肉が肥大した訳ではありません。実際に筋肥大が起こり骨格筋量が増えるには、1か月程度はかかると言われています。筋力トレーニングを始めて間もないうちから過負荷のなるほどの負荷をかけて運動をするのはケガのもとです。低めの負荷から始めて徐々に負荷を上げていきましょう。それでも、3か月ほど運動を継続すれば効果が出てくるでしょう。もし、3か月継続しても効果がなければ、負荷や頻度不足、たんぱく質などの栄養不足が考えられます。

おすすめの筋力トレーニング

 筋力トレーニングにはいろいろな方法がありますが、ここでは自宅に簡単にできる方法として自重トレーニング(自分の体重を負荷にして行うトレーニング)を紹介します。体脂肪の減少や生活習慣病の予防、腰痛や膝痛の改善を目的とするため、下肢や体幹の運動を紹介したいと思います。

スクワット

 大腿四頭筋やハムストリングス、大殿筋を鍛えるトレーニングです。

  1. 足を肩幅に開いて立ちます。
  2. 手はしっかりしたテーブルや壁などで身体を支えます。
  3. 膝を曲げながら、お尻を後ろに突き出すようにゆっくりと腰を下ろします。
  4. 膝が90度になるまで腰を下ろします。
  5. そのまま10秒キープします。
  6. ゆっくり腰を上げていきます。

 ハーフスクワットを行う際には次のような点に注意して下さい。膝がつま先より前に出ない、背中が丸まらない、視線を前方を見る、呼吸はゆっくり息を吐きながら腰を下ろす。

 身体の中でも特に大きな筋肉を鍛えるトレーニングです。基礎代謝を上げ体脂肪の減少する効果が期待できます。1セット10~15回、1日に2~3セット行ってください。

カーフレイズ

 下腿三頭筋を鍛えるトレーニングです。

  1. 足を肩幅に開いて立ちます。
  2. 手はしっかりテーブルや壁などで身体を支えます。
  3. かかとをゆっくり上げます。
  4. そのまま10秒キープします。
  5. ゆっくり地面スレスレまで下げます。
  6. 3~5を繰り返します。

 カーフレイズを行う際には次のような点に注意してください。背中を丸めない、視点は前方を見る、膝は伸ばしたままにする、呼吸を止めず踵を下ろすときに息を吐く。

 下腿三頭筋は第二の心臓とも呼ばれます。下腿三頭筋を鍛えることでふくらはぎの血管を圧迫し心臓への血液の環流を促進し、下肢の浮腫の改善が期待できます。1セット10回~15回、1日に2~3セット行ってください。

壁立て伏せ

 大胸筋や上腕三頭筋を鍛えるトレーニングです。

  1. 足を肩幅に開いて立ちます。
  2. 手を鼻先と両手で正三角形となる位置に壁に突きます。
  3. 足はつま先立ちの状態にします。
  4. ゆっくり肘を曲げていきます。
  5. 顔が壁に付く直前まで肘を曲げ、そのまま10秒キープします。
  6. ゆっくり肘を伸ばします。

 壁立て伏せを行う際には次のような点に注意してください。腰が反らないようにお腹に力を入れて行う、しっかり胸を張って肘を曲げるときは肩甲骨を寄せていくようにする、ゆっくり息を吐きながら肘を曲げていく。壁と足の位置を遠ざけるほど負荷は強くなります。

 大胸筋は体幹でも比較的大きな筋肉です。基礎代謝を上げ体脂肪の減少する効果が期待できます。1セット10~15回、1日に2~3セット行ってください。

バックブリッジ

 腹横筋や脊柱起立筋、大殿筋を鍛えるトレーニングです。

  1. 仰向けになり、足を肩幅に開き、膝を90度に曲げて立てます。
  2. 両腕を胸の上で組みます。
  3. 肩から膝までが一直線になる位置まで、お尻をゆっくり上げます。
  4. そのまま10秒キープします。
  5. ゆっくりお尻を下ろします。

 バックブリッジを行う際には次のような点に注意してください。背中を真っ直ぐ伸ばす、お尻をギュッと締めるようにする、呼吸は止めずお尻を下ろすときにゆっくり息を吐く。

 大殿筋や脊柱起立筋を鍛えることで姿勢の改善が期待できます。1セット10~15回、1日に2~3セット行ってください。

レッグレイズ

 腹筋下部や腹横筋、腸腰筋を鍛えるトレーニングです。

  1. 仰向けになります。
  2. 手を体の横に置きます。
  3. 足をそろえたまま、ゆっくり両脚上げていきます。
  4. 両足が床から30度ほど上げて位置で10秒キープします。
  5. ゆっくりと両脚を下ろしていきます。

 レッグレイズを行う際には次のような点に注意してください。負荷が強いと感じる場合には膝を90度曲げて行う、腰が反らないようにする、呼吸を止めず両脚を下ろすときにゆっくり息を吐く。

 腹横筋や腸腰筋は体幹のインナーマッスルです。姿勢を改善し、腰痛予防に効果が期待できます。1セット10~15回、1日に2~3セット行ってください。

低負荷でも効果的なスロートレーニング

 スロートレーニングとは、筋力発揮を維持しながらゆっくりと動作するレジスタンストレーニングの一種です。ゆっくり動作することでターゲットとなる筋肉の中の筋線維全体を運動に参加させることができ、比較的低負荷で行っても、筋力の向上や骨格筋量の増加が期待できます。低負荷で行っても効果が期待できるため、関節や筋肉にかかる負担が小さく、ケガなどのリスクを抑え安全に行うトレーニングです。

 スロートレーニングでは、いろいろな動作方法が提唱されていますが、「3~5秒かけて上げて、3~5秒かけて下ろす」というやり方が一般的です。さらにトレーニング効果を上げるコツとして、肘や膝を伸ばしきって休まないようにする方法があります。スクワットであれば立ち上がりきらずに再び腰を下ろす、壁立て伏せであれば肘を伸ばしきらずに再び曲げるという動作の仕方です。

 最後に繰り返しになりますが、決して無理をしないようにしてください。筋力トレーニングをすると筋肉痛が生じることがあります。筋肉痛自体は悪いものではないですが、筋肉痛が運動後1週間も続くようであれば負荷量が大きすぎることが考えられますので、1セットの回数を減らす、セット数を減らすなどして負荷量を下げるようにしましょう。

 筋力トレーニングを行う前に10分から15分ほど準備運動を行い筋肉を暖めることでケガの予防になります。方法はこちらの記事を参考にしてください。準備運動を目的とする場合は伸ばす時間を短く10秒から30秒で行いましょう。